Vol.2「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」紀行

Vol.2 JR高島屋にて開催された「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」紀行

Vol.1は読んでいただけましたでしょうか?まだご覧になってないという方は、こちらから。感想なんかもお聞かせいただけると、嬉しいです。 かわいいイッタラのバードたちにさよならして、さぁ、いよいよこの展示会のメイン!名作椅子たちの登場です。

椅子と生きる

会場では、ズラリと並んだ名作椅子の美術品のような美しさ、存在感に圧倒されました。影さえも絵になる計算された造形美にはため息しか出ません。 第2回目は、そんな名作椅子について、会場に展示されていたキーワードと共に紹介します。

「椅子は自分の居場所」

北欧の人々は、自分の居場所をとても大切にしています。そんな居心地の良い場所を「コージーコーナー」と呼びます。窓際にラウンジチェアやサイドテーブルを置いて本を読んだり音楽を聴いたり。心も体も満足する上質な椅子を選ぶことで、空間にゆとりと豊かさを演出します。そして、それが相乗効果となってよりよい自分だけの「コージーコーナー」として満足できるものになるのです。 なかなか日本の住宅事情ではスペースがないかもしれませんが、仕事に家事にと忙しい方にこそ、特別な自分の居場所を準備していただきたいです。 帰宅後や家事の合間にふっと落ち着ける自分だけの椅子=パーソナルスペースが待っていると思えるだけで、忙しい日々がキラキラ輝きをまとい、心身ともに軽やかになると思います。 会場にはそんな「居場所」になる椅子が整然と並んでいました。これらは全て織田氏のコレクションから選りすぐりの椅子たち。
だからなのか、実際に使用されてできたであろうキズや汚れもあります。 椅子をはじめとする名作家具もやっぱり人間が使うための道具の一つ。博物館に展示するように大事に愛でるより、実際の生活の中で使い手によって使われ愛用されることで、その家具は家具として最高に輝ける存在になります。 中古家具を扱う当店ですから大なり小なりキズや汚れがあったりしますが、この展示会を見てからはなんだかそんなキズにもさらに愛着が湧いてくるようになりました。
さて、展示会には著名なデザイナーの椅子が所狭しと並んでいます。その中から当店でも過去取り扱いのあったデザイナーをピックアップしてご紹介します。

Kaare Klint (コーア・クリント)

「デンマーク近代家具の父」と称され、デザイナー、教授、デザイン界のリーダーとして世代を超えて多くのデザイナーに影響を与えてました。 彼が提唱した「リ・デザン」という思想。これはモダン主義が主流で「過去にとらわれない」「斬新」な物を求める当時とは相反するものでした。それでも過去の歴史様式を見直し、それを時代の需要にあうよう再構築することが大切だという信念のもと、デザインしました。この思想は、数多くのデザイナーにも大きな影響を与えています。
クリントのデザインの大きな特徴は、素材とフォルムのバランスだけではありません。家具と空間の調和にもこだわりが見られます。 シンプルなフォルム、質の高い機能性、時代を超えて通用するデザイン、そして、妥協の無い素材と製造工程なが挙げられます。
RESTYLEにも過去色違いの入荷がありました。
SAFARICHAIR KK47000
元々持ち運びを前提に作られたチェアだけあって、工具を使わず組立分解ができるノックダウン構造になっており、軽量で、機能性に優れています。 キャンバス地はしっかり厚みがあり、座る人ごとにピッタリのホールド感があります。背もたれも簡単に傾く構造になっているので、座りながらちょっと伸びをしたり、どんな角度にもすぐに対応してくれるのが意外と嬉しいポイントです。 機能面はもちろんのこと、ナチュラルなアースカラーの組み合わせやそのデザインから、置く場所を選びません。

Grete jalk(グレーテ・ヤルク)

1960年代に活躍した当時では珍しいデンマークの女性家具デザイナーです。デザイン学校で家具デザインの基礎を学んだ後コーア・クリントに師事し1953年に独立。アアルトやイームズのデザインに影響を受けて実験的に制作された「GJ Chair」は積層材を折り紙のように組み上げた形状で、2009年にデンマークのLANGE社によって復刻されましたがオリジナルは世界的に希少な事で知られています。
先進的な取り組みを行う一方、コーヒーテーブルなどはリビングで求められる多機能性を重視した設計を行い、半世紀以上を経た現在でも色あせない魅力を持ったデザインを完成させました。
当店にもグレーテ・ヤルクデザインの家具の取り扱いがありましたので、ご紹介させていただきます。
チーク材 コーヒーテーブル
シンプルながら、奥ゆかしさのあるフォルム。真鍮が天板を浮かしているようなデザインが魅力的です。北欧家具らしい丸みのある脚もかわいらしいですね。
3シートソファ
フレームのやわらかな曲線や木の温かみ感じる美しいデザイン。カーブにこだわったグレーテ・ヤルクならではのフォルムですね。チークとカバーの色味の相性も抜群です!

Ilmari Tapiovaara(イルマリ・タピオヴァーラ)

いつの時代も社会のニーズに適切に対応した「人々のためのデザイン」という考え方に根ざしていました。戦中戦後の厳しい環境のなかで、民衆が本当に必要とする有効なものづくりを実直に目指したタピオヴァーラの精神は、時代や地域の差異を超えて、いまでも世界中の人々の心に響き渡ります。
当店では、イルマリ・タピオヴァーラの代表作2点の入荷がありましたので、そちらをご紹介ます。
UKKISEPPO社  Lukki ルッキチェア
ルッキチェアは1950年代にデザインされた数の少ない大変希少なチェアです。蜘蛛のような構造からルッキ(蜘蛛)と名付けられました。またフィンランド語で「あしながおじさん」を意味し、実用性と遊び心がうかがえます。
ヘルシンキ工科大学学生寮のためにデザインされたルッキチェア。頑丈かつ大変軽く、扱いやすいのが嬉しいポイント。
特徴的な短いアームは、これくらいの長さでも十分役割を果たせるんだ!と気づかされるデザイン。テーブルに椅子を引き寄せ易いように考慮されており、機能的です。
Laukaan Puu ピルッカチェア
現在はアルテック社で復刻されているようですが、こちらは発売当初のデザインのLaukaan puuにて製造されていたものになります。Laukaan puuでは、発売から10年ほどしか製造されていないので、とても希少なものになります。また、年々現地でも入手困難になってきているそうです。 小ぶりで愛嬌のあるデザインで、見る人の心をほっこりさせてくれます。そして、他の椅子と並べても引けを取らない存在感。パイン材と黒くペイントされた脚がとてもキュート。
当店でもすぐに完売してしまいました。

Eero Aarnio(エーロ・アールニオ)

フィンランドデザイン界の巨匠1960年代に入ると、エーロ・アールニオは鮮やかな色のプラスチック素材を用いて有機的なフォルムを形作ることに挑み、代表的な作品であるボールチェア(1963年)、バブルチェア(1968年)など、まるでポップアートのような先鋭的なデザインを次々と発表します。最近ですと、「SPY×Family」の表紙に描かれていて、お子様にも広く知れ渡っているデザイン。 彼は、「椅子は座ったときに快適でなければならない。それ以外の制約は何もない。」という哲学を貫き続けています。
当店では、1963年発表の代表作の入荷がありましたので、ご紹介します。
アデルタ / ADELTA ボールチェア Globe
思わず2度見してしまうようなフォルムのこのチェア。宇宙的で、インパクトがあります。
座ってい見ると、ふっくらとしたクッションが身体を支え、左右の景色が遮断されます。音もちょっと静かになり、まるで自分だけの秘密基地に入ったような感覚。
ミッドセンチュリーやスペースエイジのお部屋によく馴染みます。

こうやって見ると、当店の取り扱いの広さにここで働くスタッフながら驚いてしまいました。名高いデザイナーの家具を当店を信頼して売ってくれるお客様、RESTYLEならいいものが揃っていると足を運んでくださるお客様との輪を一緒に作れていることを誇りに感じます。

「椅子を買う時」

では、自分の居場所になる、その椅子をどうやって見つけるか。 ちょっと背伸びして名作椅子を買うのもよし、徹底的に座り心地にこだわっていろんな椅子を試すもよし、一目惚れのインスピレーションを大事にしてもよし。椅子との出会い方は様々。自宅にお迎えする前までのストーリーがあればより思い入れのある自分だけの「居場所」になるのではないのでしょうか。 北欧と日本では生活スタイルや住環境の違いはあるものの、人生の節目、生活スタイルの変化に合わせて椅子を買いかえてみませんか。
ここで、RESTYLE社長に「椅子を買う時」についてインタビューしてみました。
社長宅では、リビングに4台のパーソナルチェアがあります。家族4人、一人ずつお気に入りの指定席があるそうです。そのセレクトはセンスよき社長夫婦の好み。1台ずつお気に入りを見つけては購入されたそうです。そして、さらなるお気に入りを見つけては買い換えて、「居場所」を更新していっているようです。 布張りに革張り、色も違う。一見バラバラなそれぞれ違うチェアを並べても統一感が出るコツを聞いてみました。テイストがぶれないことはもちろんのこと、カラートーンと年代を合わせること。この2点に尽きるそうです。これ、簡単そうでなかなか難しいですよね。たくさんのホンモノ、いいものを見て審美眼を磨かないと、ブレブレになりがちです。 困ったら、RESTYLEのInstagramYouTubeを見てみるのも手ですよ。

RESTYLEではお客様と名作家具との出会いのお手伝いが大好き。Instagramでダイニングテーブルとチェアの組み合わせ実例やテイストにあったインテリアの作り方、コージーコーナーの組み合わせ例なんかもご紹介しています。
店頭でもお気軽にお声がけください。知識経験豊富なスタッフがお手伝いします。

さて、次回は、「デザインの源泉」というテーマで、椅子以外の家具やカトラリーや食器、小物からデザイナーにアプローチしていきたいと思います。お楽しみに!

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