Vol.4「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」紀行

Vol.4 JR高島屋にて開催された「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」紀行

3回にわたってご紹介してきたよみもの「ていねいに暮らす北欧デザイン展」も今回で最後になります。 暗くて寒い冬が長い北欧では、家で家族と過ごす時間をとても大切にしています。本章では、コージーコーナーや照明を通して、北欧の人たちが大切にする心地よさとは何かを探ります。

「心の居場所」

北欧では「コージーコーナー」という、とっておきのくつろぎスペースをお家の中につくるアイデアがあります。
「コージー」とは心地よいという意味で、「コージーコーナー」は自分だけのくつろげる場所のことです。まさに、「心の居場所」のことですね。
日本だと縁側が近いかもしれませんが、最近の住環境ですと縁側を作るスペースがなくあまり見かけませんね。でも、広いスペースはなくても自宅の一角にパーソナルチェアと小テーブルを組み合わせると、立派なコージーコーナーの完成です。ライトもあれば申し分なし。

コージーコーナー作りの一助になるようなアイデアをいくつかご紹介しながら、北欧の人々が大切にしている「心の居場所」とそれを彩る北欧のデザインについてご紹介していきます。 9月に放送終了した朝ドラ「らんまん」。皆さんはご覧になっていましたか?
私は、前半での寿恵子の母が娘にかけた言葉が心に響きました。 「自分の機嫌は自分で取れ」 こう言われた寿恵子はそれまでいろんなしがらみを抱え、暗い表情でしたが、自分の「機嫌」を取ることを最優先して、万太郎のもとへ走っていきました。その表情は、自分の心の赴くままに行動した晴れやかな笑顔そのものでした。

余談ですが、「らんまん」放送開始後から植物が描かれた家具や雑貨に心惹かれます。レトロでどこか懐かしいアンティークの風合いがドラマとの相乗効果でさらに美しく見えます。こんな家具に囲まれて植物図鑑を眺めたり、本を読みたいものです。
さて、ドラマ内では、「自分の機嫌は自分で取れ」は、女性の社会的地位が低い当時でも「自分の意志を持ち、自分を信じ、行動しなさい」という意味でしたが、現代を生きる我々にも、そして、住環境にも言えることですよね。
SNSが発達し便利になって、欲しい情報がすぐ手に入ったり、人との距離も近くなった半面、スマホが手放せなくなり、画面越しのネガティブワードや悪意あるコメントに心折れたりと、SNS上の付き合いに疲弊してしまうこともしばしば。気づけば、落ち込んだりイライラしてしまいがち。 でも、北欧の人々は、「自分で自分の機嫌を取る」のが上手な気がします。
家族で過ごす場所、自分のお気に入りの場所。
自分の気持ちが落ち着くように、住環境を整える。これは、簡単なようで難しくもあります。寿恵子のように、自分の心に正直に、自分の機嫌の取り方を知らないといけないのですから。 特に日本人は、文化や価値観には一般的に集団重視の要素が強く、個人の幸福感を追求することが社会的には控えめと言われています。一方、北欧諸国は社会的平等や福祉制度に重点を置いており、個人の幸福感や社会的な安定が大切にされています。
国民性の違いもありますが、インテリアからでも北欧の美意識を取り入れて、自分の機嫌を取り、心を豊かにしていきたいものです。

ポール・ヘニングセンの照明たち

会場では、PH3/2、アーティチョーク、PH31/2ー21/2テーブルランプなどが展示されていました。 Restyleでもポール・ヘニングセンの照明は何度も入荷していますので、そちらをご紹介します。

スノーボール

8枚ものシェードによって作り出される美しい光と影のコントラスト。 まぶしさを感じさせない柔らかな光。 滑らかな曲線を描くシェードにより形作られるフォルム。 PHスノーボールが発表された当初は注目を集めることはなかったそうです。しかし、真に美しいものというのは時が経ってからこそわかるもの。現にデザインされてから60年という時が経った今でも多くの人の心は美しい光を放つこのライトに魅了されています。

PH80 テーブルランプ

ポール・ヘニングセンの生誕80周年記念としてルイスポールセン社から発売されたPH80。 テーブルランプは既に生産が終了している廃盤アイテムです。下方と上方に光を放ち、テーブルだけでなく器具自体も照らすことで魅力的で優しい光を放っています。 浮かび上がるシェードのシルエットが美しいですね。

PH5 ペンダントライト

食卓をもっとも美しく見せるといわれるこのペンダントライト。
「対数螺旋」という独特のカーブを採用したシェードと内部の反射板を精巧に組み合わせ、不快な眩しさを抑えています。またシェードの内部を赤と青で彩色し白熱灯特有の赤い色を補正しています。このランプは下方と側面に光を放ち、また器具自体も照らすことで魅力的で優しい光を放ちます。
柔らかい拡散光と反射光が特徴です。どんな空間にも調和を保ち、心地良い雰囲気を生み出すライトです。
カラーバリエーションや限定カラーも豊富。 素敵な光のコントラストをお楽しみください。

PH 2/1 ペンダントライト

PHシリーズ最小サイズ。
乳白色のガラスシェードが特徴的。
光がガラス全体に広がり、美しいシルエットが浮かび上がります。 下方だけでなく上方も淡く照らし出すことに成功しました。
「対数螺旋」という物理現象に基づいた独特のカーブを取り入れたシェードにより、光が効率的に広がりかつ不快な眩しさを抑えています。
明るさが最も必要とされる場所に光を届け、同時に柔らかい影をつくりだすことを追求し続けたヘニングセンの総決算といえるでしょう。

「Hygge(ヒュッゲ)」

会場では、一般の方の暮らす様子がVTRで紹介されていました。

祖母の家をリノベーションして田舎暮らしを楽しむ家族。移り行く太陽の傾きとともに一日一日をゆったり、そして有意義に過ごしていました。早い日の入りに合わせて灯すのは、天井から全体を照らすシーリングライトではなく、ろうそくの光やテーブルランプでお部屋の一角をほんのりと照らします。 この光こそ「Hygge(ヒュッゲ)」。

ヒュッゲは、デンマークの生活哲学で、
暖かく居心地の良い雰囲気や瞬間を楽しむことを重視します。これは、家庭内での快適さ、友人や家族との賑やかさ、自然との調和など、さまざまな要素に関連しています。
ヒュッゲの中心的な要素には、キャンドルライト、暖炉、暖かい飲み物、居心地の良い家具、そして自然の素材を使用したインテリアが含まれます。ヒュッゲの目的は、特に寒冷な冬の季節において、これらの要素は居心地の良い環境を提供し、日常の瞬間を楽しむことで、幸福感を高めるのに役立っているんですね。 4回にわたり紹介してきた「北欧デザイン展」。

日用品から家具、照明に至るまで一貫していえることは、「北欧のデザインは、シンプルで美しい」ということです。

機能性と美しさが調和したデザインが重要視され、そこには、北欧の人々の生活様式、思想、哲学とデザインがお互いに共鳴しあい、育まれていったのがわかります。

現代に、そして遠く離れた日本に住む私たちですが、その完成された美しい北欧デザインを愛し、自宅に迎えることができます。審美眼を養い、本物に触れる機会を増やして行きたいものですね。

RESTYLEでは、いつでも素敵な家具が揃っています。実店舗でもネットショップにもお気軽に、そして、入れ替わりも早いのでこまめに遊びに来てみてください。自然と美しいデザインに触れていただけると思います。

それでは、「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」紀行はこれで終わりとさせていただきます。最後までご覧いただきありがとうございました。

(文:長谷川)

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