芹沢銈介と柚木沙弥郎、師弟ふたりのガラス絵

先日、柚木さんの作品が多く入荷したが、最近またちょっと特別な“アートの風”が届きました。

先日からご紹介している、私の推しアーティスト、民藝の世界を代表する染色家 柚木沙弥郎 とその師匠となる、人間国宝の芹沢銈介。
(画像:柚木沙弥郎 書籍より)
先日も少しご紹介しましたが、現在(2025年12月)東京(東京オペラシティアートギャラリー)でも、柚木さんの巡回展が開催されています。

(画像:「柚木沙弥郎 永遠のいま」|静岡開催 画像より)

そんなタイミングで、美術館に並ぶ級の、2人の手仕事のガラス絵がまとめてやってきました。

ガラスの裏側から描く、あの不思議で愛らしい絵です。
今回もまた、開梱の瞬間から「これは…すごいぞ」とざわついた入荷です。

(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)

わたしの贔屓目になってしまいますが…
師匠の芹沢さんより、柚木さん愛が多めのご紹介になりそうですが…
今回は、二人のガラス絵に焦点を置いてご紹介します。
(画像:柚木沙弥郎 書籍より)

出会いと弟子入り


1940年代、柚木さんは東京帝国大学(現:東京大学)で美術史を学んでいました。

もともとは研究者を目指していたのですが、戦後、大原美術館に勤務。
そこで偶然目にした 芹沢銈介さんの型染カレンダーの作品 に衝撃を受けます。

その力強さと美しさに心を奪われ、「自分もこうしたものを作りたい」と強く思い、
柳宗悦の紹介で、芹沢さんのもとに弟子入りを志願しました。
(画像:柚木沙弥郎 書籍より)

この出会いが、柚木さんを「学問の道」から「ものづくりの道」へと導く大きな転機になります。
この二人の関係が、のちに素晴らしい作品を多く生み出すこととなります。
ガラス絵もその一つで、民芸を愛した二人の“師弟”が、のちにそれぞれの感性で、それぞれのガラス絵を描くことになります。
(画像:柚木沙弥郎 書籍より)

師弟が描いた、ガラスの向こうの物語

── 柚木沙弥郎と芹沢銈介、その表現の源をたどる

芹沢と柚木、二人の作品は、同じ技法なのに、ぜんぜん違う。

その理由を知りたくて、少しだけ二人の歩みをたどってみました。
(画像:柚木沙弥郎 書籍より)

■芹沢銈介──民画の力に魅せられた人


芹沢銈介がガラス絵を描きはじめたのは、
旅の途中で出会った“民画”がきっかけと言われています。

江戸や明治のころ、人々の暮らしの中には、節句の飾りや縁起物として、素朴なガラス絵がありました。

少しゆがんだ線や、きっぱりした色づかい。

完璧じゃないけれど、まっすぐに「いい」と思える絵。

芹沢はこれを見て、「民の絵には力がある」と強く惹かれました。

(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)

ガラス絵は“逆描き”。通常とは 描く順序がまったく逆 になります。
本業の型染めは、緻密で、計算されつくした世界。
だからこそ、裏から一気に描くガラス絵のスピード感と勢いに、のびのびとした楽しさを見出したのかもしれません。
この構造に魅了され、民画のように 線・色を一気に決めていくスピード感と勢い を楽しんだと言われます。
型染め以外の“遊び場”を持ちたかったのでしょうか。
もっと自由に描ける場としてガラス絵がちょうどよかったとも語っています。


(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)

静けさに息づく文様

― 芹沢銈介のガラス絵

芹沢のガラス絵を前にすると、まず感じるのは 品のある静けさ。

彼のガラス絵には、どこか祈りのような静けさがあります。
色は凛としていて、“民芸の美”がそのまま閉じ込められているようです。


(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)

落ち着いた色。凛とした線。

浮かび上がるデザインは、日常の中の美をそっとすくい上げたように控えめで、それでいて深い。
家具と並べると、その静かな佇まいが一層引き立つ気がします。
まるで、長く大切に使われてきたヴィンテージ家具のような「深さ」があるからでしょうか。

木の家具の温もりと、芹沢の整った文様が響き合い、
そこにだけ時がゆっくり流れているように感じます。
「暮らしに寄り添う美」

それを体現したのが、彼のガラス絵でしょうか。

(画像:柚木沙弥郎 書籍より)

■柚木沙弥郎──よろこびをそのまま描く人


一方、弟子である 柚木沙弥郎 のガラス絵は、見た瞬間に「わっ、楽しい!」「子供の落書き?笑」と声が出そうな明るさがあります。
きっかけのひとつは、もちろん師である芹沢銈介の存在。

芹沢から型染めを学び、その制作に触れながら、
“絵としての色と形” に自然と惹かれていったのだと言われています。
さらに柚木さんは、型染めの「裏から色が出る」 感覚が好きでした。

ガラス絵も“裏から描く”技法。

そこにどこか通じるものを見つけたのでしょう。

(画像:柚木沙弥郎 書籍より)
60代を過ぎてからは、“自由に描きたい”という気持ちがより大きくなり、
ガラス絵はその願いを叶えてくれる表現になりました。

ガラス絵は裏から描く。

そして型染めも「裏から布に色が染みて出る」。
技法としては違うものの、“反転の美しさ” や “色の鮮やかさ”といった共通点が 柚木さんの表現欲求と重なり、自然と手を伸ばしたと言われます。

(画像:柚木沙弥郎 書籍より)
「型染めの構成力がそのまま絵になる」

ガラス絵は、まさに柚木さんの色と形の感性にぴったりでした。

彼のガラス絵は、素朴で、軽やかで、どこか子どものよう。

民芸の精神は受け継ぎながらも、芹沢とはまったく違う「よろこび」を絵にしています。

(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)

色が跳ねる、形が踊る

― 柚木沙弥郎のガラス絵
柚木沙弥郎の作品は、ガラス絵だけにとどまらないりませんが、見た瞬間に心がほどけていくようです。
赤、青、黄、緑。
鮮やかな色がガラスの上で伸びやかに息づき、

鳥や動物、人や抽象の形が、楽しげに画面を走り抜けるようです。

(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)

家具のそばに置くと、部屋の空気がぱっと明るくなります。

古い椅子も、新しい照明も、
柚木のガラス絵がひとつあるだけで“物語のある空間”に変わってしまうようです。
彼の絵は、かしこまらず、気取らず、
ただ「見る楽しさ」を思い出させてくれてずっと見ていたくなります。
柚木さんが海外で感じた楽しさも存分に感じられる作品も多く、今回入荷の作品たちもその一つです。


(画像:柚木沙弥郎 書籍より)

中古家具の店にやってくる、ふたりの作品たち

──リスタイルに届いた作品が物語ってくれること

ガラス絵は、表から見ると完成された姿ですが、

裏側には描き手の試行錯誤や、筆の迷いまで残る不思議な絵画です。

芹沢銈介のガラス絵からは、民の祈りをくみ取るような深い静けさが。

柚木沙弥郎のガラス絵からは、色がはじけるような明るさが。

ふたりの作品が、中古として私たちのもとにやってくるというのも、
なんだか物語の続きを受け取るようで嬉しくなります。
ガラス一枚の向こうに、民芸の精神と、師弟それぞれの“想い”が確かに息づいています。

(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より) リスタイルが扱う家具は、どれも「誰かの暮らしを受け継ぐ」という魅力を持っています。
そこに芹沢と柚木のガラス絵が加わると、家具とアート、過去と未来、手仕事と暮らしが、

ひとつの空間でゆるやかにつながり出します。

新品にはない、「時間の層」をまとった美しさ。
ガラス絵を手に取るお客様も、家具と同じように、

“この子はどんな家で生きてきたんだろう”とそっと想像してみるのかもしれないです。
(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)

新しい持ち主へ

今回のような、美術館に飾られるほどの作品が入荷してくると、 こちらも身の引き締まる思いです。
さらに、この作品の良さを、多くの人に届けたくなります。
そして、次の持ち主へしっかり届けたい。
長い年月を経てきた作品を、また、大切にしてくださる方に橋渡しができるように。

ここからまた、誰かの暮らしへ旅立っていくのだと思うと、
ちょっと胸があたたかくなります。

(画像:今回リスタイル 入荷商品画像より)
芹沢銈介と柚木沙弥郎。

柚木沙弥郎、芹沢銈介の作品はこちら


ふたりのガラス絵は、リスタイルの家具と同じように、
新しい住まいで、そっと光をまといながら、
また長い時間をともにしていくのでしょうか。

希少な作品をぜひお手元に置いて、いつもの“日常”をほんの少し特別なものに。

その小さな特別さは、きっと暮らしをやさしく照らしてくれます。
(文:柴田)
(画像:柚木沙弥郎 書籍より)

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