知っておいて損はない北欧デザイナー【2】う~お

あの家具や小物はだれがデザインした?

色褪せないデザイン力で人気の北欧プロダクト。前回(知っておいて損はない北欧デザイナー【1】)に引き続き、北欧のデザイナー紹介です。
前回は「あ~お」までいきたかったのに、途中で力尽きて断念…笑 なのでまた「う」から始まります。

リスタイルで過去に入荷した商品と合わせて、五十音順に紹介していきます。

ウラ・プロコッペ /Ulla Procope

1921年生まれ。後のアアルト美術学校にあたるヘルシンキの美術工芸を卒業し、アラビアに入社しました。カイフランクに見出され、同時期にアラビア社で活躍。
彼女の代表作、ルスカ/Ruskaは、1960年代のミラノトリエンナーレで発表されて以降、1961年 〜 1999年にかけて製造販売されていました。 このルスカ、多くの点で革新的なデザインでした。オーブンでも、そのままテーブルでも使用できる機能性と日常的に使用できる耐性を兼ね備え、またその素朴で土にも似た見た目が、大人気シリーズになりました。

ルスカのこんなブルーもあるんですよ。1963年にわずか数か月のみ製造されていた希少なプロダクト。過去入荷の際も即売れでした。
ほかにも人気シリーズの「アネモネ」や「ロスマリン」「コスモス」「GA」シリーズなど人気シリーズは多数で、当店でも入荷履歴が多数あります。
彼女は残念ながら1968年に47歳という若さで亡くなってしまいました。その短い人生の中で、たくさんの名作を生みだしました。
日常使いできる丈夫さと使いやすさ、そして飽きのこない不変なデザイン性で個人的にも大好きなデザイナーです。
「日常使い出来る」デザインってとても大切ですよね。 カイフランクもそうですが、奇抜さや個人の偉業だけを見せつけるような、自分勝手なデザインではない「日常に寄り添う」デザインをする彼女が、私は好きです。

エーロ・アールニオ/ Eero Aarnio

1932年フィンランド生まれ。1954年からヘルシンキ産業デザイン大学でデザインを学びました。1962年に自らのスタジオを設立。
ボールチェアやバブルチェアなど、大胆にプラスチックを取り入れた有機的なデザインは、まるでポッポアート。今でも先進的なデザインに感じるのに、当時はとても驚かれたデザインだったのではないでしょうか?
ニューヨークのMoMA、ドイツのVitra Design Museumなど、著名な美術館の所蔵コレクションとして名を連ねています。
この可愛いパピーも彼のデザイン。マジス社のアイコン的なデザインともなっています。
表情が無く、必要最小限のパーツで構成されたこの作品は、オブジェとしての存在感もあります。実はアールニオは、パピー以降、ペンギンや鳥など、多くの動物モチーフをデザインしています。
アポロ計画に沸いていた1960年代後半。宇宙にインスパイアされた斬新なデザインが流行しました。それがスペースエイジと言われる未来的で有機的なデザインです。
この頃に上映された映画『2001年宇宙の旅』に出てくるこのボールチェアは、私の記憶では、この青と黒の入荷履歴がリスタイルにはあります。(赤もあったかな?)

このボールチェアはフィンランドの大統領をはじめ、モナコのグレース王妃、イヴ・サンローラン、フランク・シナトラほか、多くのセレブたちに愛用された名作チェアの一つです。

周りの騒音を70%ほど遮断してくれるそう。1958年に発表されたエッグチェアの、ヤコブセンにも影響を受けてるのかな?と思いを巡らせてしまします。

ケネディエアポート(ニューユーク)のバージン航空・ファーストクラスにも採用されました。 北欧デザインの革新者として、押さえておきたいデザイナーです。

エーロ・サーリネン / Eero Saarinen

1910年に建築家、エリエル・サーリネンの子供としてフィンランドに生まれます。建築家でプロダクトデザイナーです。
後に家族でアメリカに移住し、父が教えるクランブルック美術大学でデザインを学びます。
ここでチャールズ・イームズと後のレイ・イームズ夫妻と知り合います。そうあのイームズと知り合う歴史は胸熱ですね。 1940年には、ニューヨーク近代美術館主催の「住宅家具のオーガニックデザイン」コンペに、成型合板を使った椅子などをチャールズ・イームズと共同で出品し、2部門で優賞した経歴を持ちます。
これによりチャールズ・イームズと共に一躍注目を浴びます。 幼い頃からデザイナーのフローレンス・ノルと深い親交があり、彼女のデザインにも影響を与えました。
フローレンスがノル / Knoll /に入社した1940年より、Knollとのコラボレーションを開始。
その後「グラスホッパー・チェア」、「ウーム・チェア」や代表作となる「チューリップ・チェア/テーブル」シリーズなど数々の名作をデザイン。
フローレンス・ノルとサーリネンの関係はこちら
当店では、赤坂プリンスホテルで使われていた、チューリップチェアやテーブルが大量入荷していますので、ぜひおすすめの家具です。
チューリップテーブルは、リスタイル社長やリスタイルのスタッフのお宅でも使われています。 スタッフ岸川のお宅訪問はこちら 恵まれた環境でのなか名作を生みだした彼も、51歳という若さで亡くなっています。
建築家としても多くの名作を残した彼。ジョン・F・ケネディ国際空港のTWAターミナルビルなど、コンクリート・シェル構造を用いた流れるような曲面の、表現主義的なスタイルの建築を確立させ、建築界でも一世を風靡しました。
アメリカのミッドセンチュリー期における重要な役割を果たしています。

作品ごとにその作風を変えることから、生存中は建築界の権威から無視され嘲笑の的にもなったとのことですが、今となったら信じられませんね。
多くの有名デザイナーや画家は、生きている頃はあまり評価されなかった人も多いですよね。私の大好きな画家ゴッホもそう、切ない…。時代が彼らに追い付いていなかったのでしょう。
サーリネンも、今では、20世紀のアメリカを代表する巨匠の一人として数えられ、覚えておきたい一人。

エリック・ホグラン / Erik Höglund

1932年、スウェーデン出身。ぽってりとした肉厚ガラスとプリミティブな形は、彼の独特な作風です。20世紀スウェーデンのガラスデザインにおいて、重要な一人。
ストックホルムの国立芸術工芸デザイン大学で彫刻を学んだ後、1953年にボダガラス工房に入ります。
長年にわたりボダ社に在籍し、彼はその斬新なアイデアや色彩、表現をもって、デザイン展への挑戦も続けました。
南米のフォークアートなどにも影響されたと言われています。
1957年には北欧デザインにおいて最も権威のあるルニング賞を受賞。 一見華やかな経歴かと思いきや、彼は、12歳で心臓病と糖尿病であることがわかり、一番才能があったスポーツを諦めて、画家の道に進んだとのこと。
その後、画家では生活することも難しかったため、生活をするためにガラス工房(ボダ)に就職したとのことです。
そういった病を抱えながらも、前向きで明るく、遊び心を持っていた彼は、伝統的なやり方を 実験的な気持ちで、遊び心を持って変えていったとのこと。 こちらもわたしが個人的に大好きなデザイナーです。
彼は、「逆の思考で物事に向き合うことは、価値のあることだ」とよく言っていたそう。凝り固まった考え方をやわらかくしてくれる、素敵な考えです。

オイヴァ・トイッカ / Oiva Toikka

1931年生まれ。フィンランドを代表する陶芸家でありガラスアーティスト兼デザイナー。 1956-59年にはアラビア、その後はヌータヤルヴィで活躍。
代表作は、イッタラから1973年に生まれたBirdシリーズ。このシリーズは2025年現在も続き、毎年のように新しいバードを創り出しています。世界中に彼の熱烈なコレクターが多くいます。
Birdは、リスタイルにも度々入荷してきます。皆さん大切にされているのか、入荷時にも、カケやキズがあるものは見たことがありません。こんな愛嬌があるバードちゃん、みんな大切にしますよね。 アラビアに在籍していた当時は、すでにビルガー・カイピアイネンやルート・ブリュックのような著名なアーティストたちに席巻されていました。
アラビアのアーティストたちは、伝統的な陶芸家と、自由で彫刻的なアプローチの提唱者という2つの異なるアーティストに分かれ、オイバは、古典的な伝統を代表するよりも自由な道を選んだとされています。 彼の作風からよく伝わりますね。

Birdの他にも、FLORAやカステヘルミなどの作品も有名。 彼がデザインし、ロールストランドから発表された、コボルティのテーブルウエアも最近入荷してきました。
オイバ、テーブルウエアもあるなんて。このコボルティ、オイバ自身も、知っておいて損はない北欧デザイナー【1】で紹介した石本藤雄さんも愛用しているとか。
コバルトブルーのハンドペイントのデザインが特徴で、東洋を思わせるような藍色とそのにじみ具合も大きな魅力です。
このコボルティ、なかなか希少なのでぜひピンときた方は、コレクションに入れてあげてください。
模様はアイテムごとに異なり、それぞれにオイバのふしぎな世界観が表現されています。 オイバは、様々な挑戦を繰り返し、1点もののアートピースなども次々と発表しています。
リスタイルにも何度かアートピースも入荷。希少でした。 無限の想像力と遊び心あふれるデザイン、そして鮮やかな色使いの作品で世界中にファンがいるオイバ・トイッカ。
1993年には、フィンランドから芸術名誉教授の称号も与えられました。彼の作風から 彼はデザイナーとして有名になることを望んでいませんでした。
「デザイン”も”するアーティスト」と呼ばれることを喜んでいたそうですよ。 ずっと、形にとらわれない自由な“アーティスト”でいてほしいですね。

オーレ・ヴァンシャー / Ole Wanscher

1903年に美術史家の父と画家の母 の間に生まれました。
デンマーク王立芸術アカデミー家具科でコーア・クリントの下でデザインを学び、クリントの後継者として、専任教授に就任。 デンマークのデザイン界を牽引してきた存在であり、家具研究の著書も多くアカデミックなデザイナーとして知られていました。
当店には、Model169などが多く入荷しますかね。 代表作としては、コロニアルチェア(No.149)でしょうか。(当店にも入荷履歴がありますが写真が探しきれなかった…泣)
家具を一つの建築物と考えたヴァンシャーは、優美な細い線を駆使した、躍動感のあるフォルムのこの作品を作り出しました。
これはクリントの教えに従い、18世紀のイギリス植民地様式を範として、彼がリデザインをおこなったものです。 こちらは、ヴァンシャーのPJ112。ファブリックもかわいくこちらも即売れでした。
PJ112は現在製造されておらず、ヴィンテージでしか入手できない貴重なプロダクト。 モデル169に比べて線が細く、スッキリとした印象ですね。 こちらの方が線の細いコロニアルチェアに近いですね。 美術史学者を父に持つ彼は、家具の歴史的背景に興味を持ち、ヨーロッパやエジプトにしばしば研究旅行をし、本や論説、論文を発表した学者でもありました。
その経験が、ヴァンシャー独特のこの格式高い世界観の一部となっているような気がします。

家具の研究にも尽力をつくし、著書も数多く残したヴァンシャーが、1932年に刊行した、家具様式の歴史本「MOBELTYPER」は後のデザイナーに大きな影響をもたらしたことでも有名。
デンマークを代表するデザイナーハンス J. ウェグナーは、掲載されていた中国・明代の椅子の写真を見て刺激を受け、Yチェアが生まれるきっかけとなった、初期の代表作「チャイナチェア」をデザインしたといわれています。
ヴァンシャーがいなかったら、Yチェアは生まれてなかったかも?!なんて思うと、家具の歴史をたどるのも、さらに面白く感じます。 やっと【お】まで終わった…笑
これは思ったより長い道のりになるんではないか??! と、ただ今気が遠くなるような思いになっております…泣笑
でも勉強にもなるし、のんびり続けていこうかな…笑

五十音順にまた紹介していきます。疲れた~

(文:柴田)

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