循環する建築・循環する家具

先日、当店ネットショップで購入くださったお客様宅へ、納品後の取材におうかがいさせていただきました。
そこでの取材でたくさんの学びがありましたので、ご紹介させて下さい。


※こちらは、リスタイルの商品ページでの商品画像です。

はじまりは、お客さまからの1通のお手紙から。

ご丁寧な文章でいただいた文章には「取材においでになりませんかというお誘いです 」という嬉しいお誘い。

当店のお客様は、商品納品後、こちらからアクションをしているわけではないのに、自らお礼のメールをしてくださる方が多く、こちらが恐縮してしまうほど。
今回のお客さまも最初、購入してくださった当店のオリジナル家具に対する素晴らしさと、気に入っていただいた旨をご丁寧にメールしてくださいました。

お客様よりメール—-
本日午後 早い時間に
RMP ブビンガカフェテーブル 受領いたしました
荷受け後点検し、傷みなどないことを確認しました
マットな卓面で 再生されていて とても 使いやすいと思いました
こんなテーブルが欲しかったんだよ~ という感じです
品質保証も付いていて 感激しました
RMPはとても よい活動スタイルですね 陰ながら応援させてください
受領報告と 御礼まで
———-

これだけでも嬉しかったのに、その後こちらからお客様の声としてHP掲載のお願いをしたところ、冒頭のお誘いをしてくださいました。

A4用紙2枚ほどのご丁寧でユーモアのある文章で、のちに分かることでしたが、国語の教員をやられていた、ということに非常に納得。
お客さまが現在お家をリフォーム中で、その中で当店の家具を選んでいただいたとのこと。
そのリフォームの過程なども踏まえ、家具が置かれた写真があるといいのでは。というご提案でした。

お客さまのお宅があるのが、愛知県の近県の某地域。
リスタイルがあるここ愛知県春日井市から、隣の県とはいえ車で結構な遠方でしたが、「行ってみたい!」と楽しそうなことに飛びついてしまう私は、ぜひとお返事させていただきました。

ついに取材の日

6月某日、雨が少ないといわれる地域で、大雨になってしまった約束の日。
雨女の私のせいでしょうか?(笑)

愛知から向かう道中も、朝から大粒の雨。
数時間かけてお客さまとの待ち合わせ場所に着いた頃もまだ雨でしたが、優しく丁寧に出迎えてくださったお客さま。
「せっかくだから、お昼は美味しいお蕎麦を」というお客さまの嬉しいご厚意。
美味しいお蕎麦をいただきながらお互いの自己紹介を。そのひとときに、また癒されました。

その後も、素敵な場所数カ所に連れて行っていただき、最高のアテンドで取材前からこの町を満喫してしまいました。

そして、お客様宅へ。

最初に母屋の方ご紹介いただきました。
写真を撮り忘れてしまったのが残念ですが、和室二間を改装しフローリングのモダン和室にしたというそちらには、なんとブビンガの一枚板ダイニングテーブル!
亡くなられたお母さまが座敷の座卓として購入され、大事に使っておられたのを流用してダイニングテーブルにされたそうです。まさに当店がおこなっているプロジェクトの真髄と一緒でびっくりです。 
そこにもお客さまの目利きで選ばれたような素敵な家具がたくさんありました。
また、私が驚かされたのは、至る所にアートが置いてありまるで美術館のような趣。
聞くと、そこで喫茶店を計画していたとのことで、そのために珈琲を学びにいかれたこともあるとか。この前向きな姿勢と行動力、尊敬です。

※こちらは、お客様宅をリフォームされた際の内装屋さん(後に取材にも参加してくれたかた)が手がけたお店。こちらも素敵なお店でした。

破棄されるはずの建材を利用したい。

もう一点驚かされた点。
それが、今回お客さまは大きくリフォームされた場所が別にあり、(後の取材場所)そこで使用するため、母屋の方で「使われていた、本来なら破棄してしまうはずの、襖や雪見障子を残す。」という点。
この計画のきっかけは、改装に関わってくださった信頼できる内装屋さんが進言してくださったとのことでした。
また、お客さまがこの内装屋さんにも声をかけ、この日取材に参加してくださいました。
内装屋さんとお客さまの出会いは、海外旅行でたまたま同じツアーになった、というドラマのような出会い。そのお話も非常に魅力的で、行動力があって人生を楽しんでいるお客さまが、とても羨ましくなってしまいました。

※こちらは、旅先の一つ。ウィーンの一コマです。イメージ画

今回のお客さまのリフォームにおいてポイントは、この「残した襖・雪見障子を全て使って部屋を作る」こと。これは、当店のリバイブモブラープロジェクトにとても通ずるところがある!と嬉しくなってしまいました。
その中で当店のこの家具を選んでいただいたんだな、と思うと感慨もひとしおです。

まるで舞台。

実際にリフォームされた現場へ。
以前は、農業資材屋さんの倉庫として使われていた場所に、部屋をつくったというお話から、「どんな感じなんだろう?」と想像がつかない中、扉を開けてくださりました。
そこに現れたのは、まるで舞台のような空間。
のちにわかったことですが、お客さまは現在、舞台演出もされているとのことで、その場の空間作りがまるで〝舞台〟のようで素敵でした。

いよいよお話をうかがいながらの取材!…の前に、ここでもまたお客さまのおもてなし力。
お客さまが淹れてくれた特製の珈琲とお菓子をいただきながらの取材。
…という名の楽しい座談会。

リバイブモブラープロジェクト活動の浸透

リスタイルを知ったきっかけは、丸いテーブルが欲しいと思い、ネット検索で当店を知ってくださったということでした。
いろいろなお店が出てくる中で当店を選んでくださり、ブビンガで無垢材、しかも座卓を再利用しているというコンセプトに最も共感してくださいました。先ほどの母屋の一枚板テーブルもブビンガで、どこか運命を感じます。
裏を覗いてみると座卓の跡があるんですよね、と、その跡さえも愛らしくなってしまうというこちらのコンセプトをしっかりと受け取ってくださっていました。

弊社では、こういったオリジナルのプロジェクトから生まれる家具造りや、お客様のご要望にあった家具のリメイクやリフォームも積極的におこなっています。
ご自身の思い入れのあった家具を、需要が無くなったからと破棄するのではなく、できるだけ良い材を残し、思い出と共に再生していく。この活動がもっと広まるように、私たちも頑張っていきます。
是非ご興味のある方は一度ご相談ください。

北欧と日本の、歴史を超えた共演

おそらく50年代頃のフィンユール黄金期のチェアと思われる、こちらの珍しいフィンユールのチェア。デザインが好きでお客様がお選びになったとのこと。当店オリジナルのブビンガの丸テーブルと、このフィンユールヴィンテージチェアと赤いライト(こちらは、ヤック・ヤコブセン/Jac Jacobsenのライトでしょうか?)がすごくお似合いです。
こう言ったデスクに、手元を照らすデスクランプ(しかも赤)をしっかりと選択されるお客さまのセンスが感じられます。光の効果や光による奥行きは、空間をやさしく演出してくれます。

日本と北欧のライフスタイルは、どこか共通することが多く、日本人に人気が高いのも納得です。
何年もの暮らしを支えてきた良質な家具が、時代を超えて何代もこのように引き継がれていくのは、まさに「循環する社会」のひとつではないでしょうか。

破棄ぜずに生まれた最高の形

この後ろに見えている白い建具は、先ほどから申し上げている、母屋で襖だったもの。そしてリフォーム後展示用パネルとして、襖の敷居にはめ込まれていたもの。その二つを合わせて、使用されています。
片側4枚の扉を、昔の雨戸のように片方から蛇腹のように開閉できるように仕上げる大工さんの技術に脱帽です。
そこに取手を付け、現代のデザインに合わせた建具として使用されていました。

大工さんがお客さまのアイデアを聞き、形にし、プラスの技術が蓄積される。
既成概念に囚われない考えが大切。
研究心・好奇心をもつことで、邪道といわれている邪道をしたことで、逆に新しいことが生まれる。
と、大工さんを紹介し、この家づくりに関わらせ、結果素敵なものを作り上げた、内装屋さんがこのような話をしてくださいました。

最後には「やってよかった。」と大工さんもつぶやいたそうです。(大変だったようですが(笑))

難しい課題を与えられた時に、そこで「できない」と決めつけるのではなく、やれるように考え、実行することで一歩先に進む。
全てに通ずる考えのような気がします。

左に見えるのは、食器棚として使用すると言われていた北欧の蛇腹キャビネット。

こちらの下を支えていたものも、当店で購入してくだだった堀田木工のデスク。このように使われているんだと驚きとお客様の発想に感心させられます。
固定概念に囚われず、アイデア次第で快適で豊かな暮らしが実現できるのだと改めて考えさせられました。

そしてこの部屋の顔ともなっている、障子と雪見障子。こちらが元々母屋にあった障子です。
日本古来の建築様式である障子を、このように美しい空間の扉として利用されていました。
美しいデザインと実用性から近年再評価されているという雪見障子。四季を楽しむためのこの建具が、とてもかっこよく生まれ変わっています。
内側や外側から少し見える景色が、中からも外からも楽しめそうですね。

ご自身の手で作り上げる空間

天井は、演劇の舞台で使う紗幕(主に舞台で使う透ける素材でできた幕)という幕を、お客様が一つ一つローラーで貼って仕上げたそう。
あえて暗い色でこの空間を演出しています。

お客様、内装屋さん、大工さんの傑作のような空間。
内装屋さんが、お客さまのこの想いを「生涯においての、家から始まって家具までのトータルのデザイン」と話してくださったのが印象的でした。

※ご家族みんなで塗ったという証の、この手形が愛おしい。(姪子さんのお子さんのもの)

最後は特注されたというスピーカーで、この空間に音楽も流していただいて、まるで美術館のようでした。
お客様が、ご自身で塗られた漆喰。
その漆喰の壁がすべての空間に共鳴し、美しい音を聴かせてくれていました。

「造ったという想いと一緒に住んでいる。」
最後のお客様の一言が印象的でした。
ご自身の想いと内装屋さん、大工さんの技術の傑作の空間、その中にリスタイルの家具が置かれているのがとても誇らしかったです。

今回のお客様のリフォームのお話や実体験、またそこに関わったかたのお話も実際に聞けたことで、当店のオリジナルプロジェクトのリバイブモブラープロジェクトも少しづつやってきてよかったなと感じています。

※こちらは、内装屋さんが内側を手掛けたお店。ここでいただいたソフトクリームがまた絶品でした!また食べたい…今すぐ食べたい…。

これから求められる、サステナブルな建築や中古・ヴィンテージ家具のあり方

お客様が教えてくださった今回のリフォームのきっかけになった内装屋さん。
この内装屋さんは、世の中が「SDGs」「サステナブル」などと謳うずっと前から、天然の調湿塗装材を造られ使用してきたとのこと。
古来よりある漆喰をベースに天然資源をブレンドすることで漆喰の良さを高めた材をつくられたということでした。

そして、今回のお客様のリフォームされた部屋の床材も、実際にお客さま自身で貼り、天然成分の蜜蝋で仕上げています。
蜜蝋は当店も家具のケアや保護としてもたくさん利用しています。

新しい建築物を作る時、既存の建物の取り壊しが必要です。
廃材の分別やリサイクルが難しい場合は、それらは大量の廃棄物となります。家具もまた然り、です。
また、その処理には大量のエネルギーが必要です。
そのため今は、新しい技術や資材の開発が至る所で盛んにおこなわれています。

破棄されるはずの建築資材や家具の再利用、人間が考え努力して生まれた建材、ミツバチが自分の巣を作るための天然の建築材料。
これらはまさに「持続可能な社会」を目指すために必要なものではないでしょうか?

また内装屋さんは、建築士さんやデザイナーさんとの間に挟まれた関係ではなく、しっかりとキープランをお持ちの施主さんと、直接お仕事ができて嬉しい、とお話ししてくださいました。
弊社も、お客様がお持ちの今ある思い入れのある家具を、工房スタッフが直接お客様と話しながら、家具のリフォームや修理をおこなっています。

お客様の理想や想いを、できるだけ思い通りに形にすることは、すごく骨の折れる大変な作業ですが、仕上がりの満足度やお客さまの喜びが直接感じられると、倍の満足度や嬉しさが感じられます。
できるだけ破棄せずに、思い出と共にまた新しいカタチで生活に沿った家具を作り出す。やりがいのある仕事です。

地球の資源は限られています。

大量生産・大量消費を繰り返す今の社会を、今後も続けることは不可能です。
また、CO2の増加による地球温暖化の悪影響が懸念されるなか、いかに地球環境を考えより良い方向へ向かっていくのが、私たち現代に住む人間の共通の課題といえます。
できることから少しずつ、その少しを一人一人が心がけることで何倍もの力になり、社会を、経済を動かす力になります。
「SDGs」「サステナブル」という言葉を隠れ蓑や免罪符にして、資本主義の経済を回す。
そういった表面上のものではなく、これまでおこなってきた人間の過ちや失敗を学び、日本のすばらしい暮らしや世界の事例も参考にし、本来の意味での「循環する社会」を目指すことを考えなければいけません。

「サステナブル」を、一過性のブームにするのではなく、それが当たり前の社会になることが本当の意味での循環する社会ではないでしょうか。

この夏うまれる、サステナブルな店舗

最後に、弊社がこの夏、新しい店舗を出店いたします。詳しくはコチラ
大阪にて、2店舗。サステナブルを意識した店舗です。(宣伝のようになってしまいましたが、たまたまです。)

こちらの内装なども、ほぼ全ての材を廃材から作り上げ、全てスタッフの手作業です。
天然資源からいただいた材をできるだけ無駄にせず再利用し、「造ったという想いと一緒に」お店づくりをすることは、「大変だけど楽しい」と言っていた、お客さまの言葉がすべて物語ってくれています。

楽しみながら循環する社会を作っていけたら、これほどまでに「SDGs」なことはないのでしょうか。

今回取材に協力してくださった、お客さま、内装屋さん、
一緒に取材に協力してくれた友達に感謝します。

楽しく学びのある、素敵な時間をありがとうございました!
(文/柴田)

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